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伊東ベテランズ

火曜朝の抄読会 2023-Case16

2023.5.9

CLINICAL PROBLEM-SOLVING

A Diagnostic Sequence 09.05.2023

 今年(2023年)第3回の<CLINICAL PROBLEM-SOLVING>の紹介です。Penncylvania大学Perelman School of Medicineからの出題と解説です。

 42歳の中国出身のアメリカ人女性が3日間の息切れ、倦怠感、黄色・粘調痰を伴う咳を主訴として救急外来を受診しました。微熱と悪寒を伴います。理学所見、検査結果からは肺細菌性肺炎による敗血症の診断となりました。画像診断/単純写真・CT所見では両側肺のdiffuseな気管支拡張症が顕著です。更に喀痰の微生物検査からはP. aeruginosaやnontuberculous mycobacteria感染が明らかとなります。何と臨床的な病態としては慢性肺疾患の急性増悪の病像を呈しています、しかしこれまで無症状でした。多剤による抗菌治療に効なく呼吸不全は悪化して気管内挿管による人工呼吸管理となりました。気胸も合併します。不自然な病状から遺伝子検査がされて、cystic fibrosisに特徴的なcytic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)蛋白に関連する遺伝子異常が証明されてcystic fibrosisの診断が強く疑われました(swet-testingは実施されませんでした)。患者は5か月にわたる集学的治療も効なく亡くなりました。

  COMMENTARY: 本例においては気管支拡張症と複数細菌感染による肺炎とそれによる呼吸不全と単純に重されていたところが更なる検索によって背景にあるcystic fibrosisの診断に至りました。

 cystic fibrosisはCFTRタンパクの障害によるイオン転送の障害が起こる疾患です。CFTRタンパクの障害には5クラスの遺伝子異常がありそれぞれの結果で気管支拡張症、内・外分泌異常をきたす膵機能不全、大腸閉塞、そして女性における不妊といった病状を来します。結局cystic fibrosisの成人症例は呼吸不全でなくなることになります。膵機能不全を有する患者の中で外分泌機能と症状が必ずしも並行しないことが言われており、本例において進行したcystic fibrosisが明らかになるまで症状が顕著とならなかったことと関連するかもしれません。このことは35歳以上のcystic fibrosis症例の約15%に膵内分泌障害とcystic fibrosis関連糖尿病を有することが知られていますが、インシュリン欠乏とインシュリン低個性の両者を有するという特徴を有することが知られています。本例はHbA1c値は糖尿病前状態を示しながら入院中の高血糖は顕著でした。cystic fibrosisの診断は通常、新生児期にスクリーニング検査として膵外分泌障害に関連するimmunoreactive trypsinogenを検出して,更に汗テストで確認する経過を経ています。アメリカ産婦人科学会では全ての女性妊娠予定、或いは妊娠中の女性に対してキャリアスクリーニング検査することを推奨しています。パートナー両者がキャリアである場合には羊水検査も可能です。 

 一方、本例では42歳になるまで診断がされていません。集計によるとcystic fibrosisは4%が18歳以上で診断され、うち半分は40歳以上で診断されます。成人発症で症状からcystic fibrosisが疑われる症例にはsweat-testingが推奨されていますがlimitationが指摘されています。即ちcriticalな状態では浮腫などの生理的変化により性格性が減じるといわれています。更にcystic fibrosisの成人例にはsweat-testingが陰性であったり境界域の結果になることが知られています。本例ではそういった背景もあってsweat-testingは入院中に実施されませんでした。ガイドラインでは成人発症でcystic fibrosisが疑われ、更にsweat-testingの結果が決定的でない場合の次のステップに遺伝子検査が推奨されています。本例では遺伝子結果からは強くcystic fibrosisが疑われますが、技術的にはsweat-testingが実施されておらず決定的な結果ではありません。異なる人種や地域によってcystic fibrosisのスクリーニングやその病像は異なります。アメリカでは全ての州においてcystic fibrosisについて新生児スクリーニングが実施されてimmunoreactive prypsinogen値が高値であった場合には、百余りあるCTFR variantsについて遺伝子検査が実施されます。しかしそれでも非白色人種では稀なvariantsについて漏れが生じます。加えてcystic fibrosisを有する黒人においてはスクリーニング検査結果が異常であっても結局、診断が遅れる傾向があり、診断時に肺機能が悪化していたり、遺伝子variantsがCFTR modulator therapyに不適であったりして、これら因子が黒人における格差を生じることになります。CFTR modulatorはCFTR機能をある程度改善して、呼吸機能悪化を回復し、BMIを増加することがplacebo-controlled trialで確認されています。他の報告では膵外分泌機能マーカー値を改善し、肝・胆道合併症を減じ、耐糖能を改善し、妊娠機能を回復することが示されていますが、randomized trialは成されていません。更に本例のような重症患者における効果については不明です。本例ではcystic fibrosis成人症例における遺伝子検査の有用性と人種による異なる病像の可能性を示すものです。早期診断とCFTR modulatorによる治療がcystic fibrosisの経過に良い結果をもたらす可能性が示唆されます。

< 伊東ベテランズ 川合からの報告です >