臨床倫理指針
リビングウィル 病状説明意思確認
病院では様々な医療知識/技術、薬物、看護、リハビリを用いて、病気を治せるように、元通りの生活が送れるように、少しでも長く生きられるように日々努力しています。しかし、どんなに医療が発達しても、最期の時は訪れます。最期まで理想の生き方を貫き通せるといいのですが、いろいろな事情で理想から離れてしまうことがあります。
実際ある意識調査では末期癌と診断されたとしたら最期は自宅で過ごしたいと7割近くの人が答えていますが、7割以上の人は病院で亡くなっている状況です。
また、家族にとっても本人の希望がわからないと、本人のためになっているのかと、不安に思ってしまうこともあります。あらかじめ自分の生き方、考え方を周りの人と共有していると、より自分らしく過ごせるだろうと考えています。
伊東市民病院では、ご利用いただく皆様が希望される治療や人生の最終段階における医療等について書面にしておけることを目的に、「病状説明に関する意志確認書」と「リビングウィル」の書類を準備いたしました。
ダウンロードページ にて取得できます。
ご自身の直近の意思とご署名をいただき、記入した意思が直近の意思であることを示すために年月日も合わせてご記入してください。記入済みの書面は、 家族や代理人等必要な署名等をもらったうえで、これらの人達がすぐ判るように保管いただき、当病院ご利用の際に担当医師等に提示いただければと思います。
伊東市民病院としての関わり方
医療行為に関係することも多い話です。病名だけでなく、予想される症状や経過などについてお話しします。わからないことがあったら気軽に聞いてください。
気持ちが決まっているようでしたら、かかりつけの医師、看護師にも伝えてください。入院などの状況の変化があるときには、本人・家族の話し合いに医療者も加えてください。
患者さんの気持ち、家族の気持ちを聞いた上で、一緒に最善の治療を考えていきましょう。
なお、本人の気持ちがわからないときには、家族など親しい人に本人ならどのようにするのをのぞんでいるのか想像してもらい、治療方針を決定していかざるを得ません。その場合には、本当の気持ちと異なる治療になってしまうことがあるだけでなく、代わりに判断してもらう家族に精神的な負担をかけることになってしまいます。そういった意味でも、是非本人の気持ちを知りたいと思っています。
この内容について質問がある方は、主治医、ケアマネにお問い合わせください。
「人生会議」、ACPについて
自分の生き方をみんなで話し合い、共有することを、「人生会議」、ACP(advance care planning)と呼ばれるようになりました。病院スタッフが専門職としてその場に立ち会うこともあります。かかりつけの医師やケアマネなどとも相談しながら自分らしい生き方ができるといいと思います。病院としても患者さん、家族の理想に配慮した医療を行っていきたいと思います。
人生会議をするタイミング
普段から意識をすることは難しいと思いますが、健康についての話題が出たときなどをきっかけに、周りの人と話ができるといいと思います。 具体的には以下のような時に考えるといいと思います。
- テレビの健康番組を見たとき
- 周りの人や有名人が病気に罹ったとき
- 長年つきあわなければならない疾患(生活習慣病、脳梗塞、心不全、悪性腫瘍など)が診断されたとき
- 加齢や病気のために生活レベルが落ちたとき
- 入院をしたとき
- 治療に全力を尽くす時期でなくなったとき
特に入院したときは医療者も交えて話をするのがよいと思います。その他に、誕生日、妊娠出産、退職などをきっかけにする人もいます。
悪性腫瘍、加齢、老衰だけでなく、心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患などのいろいろな病気の末期でもおこりうる話です。事故で若いときに起こることもあります。今は健康だから何かあったときにと思わずに、10年後、20年後や、突然の病気・事故にあったらと想像して考えてみてください。
何かがあったときには慌ててしまい、しっかりと考えられないものです。落ち着いて考えられる時に少しずつ考えて、周りの人と共有するのが大事です。
人生会議で考えていくこと、話し合うこと
選択の場に直面するまで、わからないことも、決められないこともあると思います。その場で結論は出さなくてもいいので、家族とは何でも話をしてください。とくに自分のこれまでの歴史、生き方、価値観が今後を考える参考になります。「どんな状態でも1分1秒でも長く生きたい」と考えているのか、「意識がないなら生かされるのはいやだ」などの価値観がわかるとよいです。
時間とともに気持ちは変わるものです。気持ちが変わったらその都度教えてください。自分らしい人生を最期まで過ごすために、家族に後悔させないために少しずつでも話す機会を作っていきましょう。時間とともに考え方が変わったら、それも伝えていきましょう。
架空事例
① 50歳代。癌が進行し、食べるとむせて、肺炎を起こしやすい状態になった。
少しでも長く生きるなら、絶飲食で点滴として療養型病院入院との話もあった。
脱水や肺炎の危険はあるが、食べられる範囲で食べて、家族と過ごす方がいいと考えた。
家族に見守られながら、自宅で最期の時を過ごすことができた。
考え方がうまく共有され、想いを遂げられた事例です。
②60歳代。癌の末期と診断された。
短くても家で家族と過ごす時間が大事、旅行に行きたいと思っていた。
徐々に進行し「抗癌剤治療を終了すると半年程度、続ければ1年程度の見込み」と言われた。
副作用でどの程度体力が失われるかは考えていなかった。
主治医からの勧めも有り抗癌剤を続けたが、副作用のために旅行に行くことはできなかった。
抗癌剤をやめたときには寝たきり状態に近く、自宅での生活は大変で、1年程度で亡くなった。
寿命よりも過ごす内容を重視していたが、本人が医療従事者に気持ちを伝えられないことで、思ったような治療方針、最期の過ごし方ができずつらくなってしまった。
主治医と優先するものについて話し合えたら変わっていたかもしれません。
※抗癌剤すべてが悪いわけではありません。
改善の見通し、体力の維持の程度を相談しながら適切な治療を選択しましょう。
③40歳代。②の方の子供。
延命治療をしたくないという本人の希望に反していることで、「人工呼吸しなければよかった」と後悔した。
後悔の念が強く負担となり、うつ病に罹ってしまった。
自分の人生だけでなく、家族にとっても大事な話です。
70歳代。もともと延命治療はしたくないと夫婦で話し合っていたが、子供とはそのことを話していなかった。
1年前に交通事故にあい、脳の障害で意思疎通が困難となり、誤嚥性肺炎も繰り返していた。
肺炎治療のたびに苦しそうな表情をしていた。
急に誤嚥性肺炎で意識不明となり、人工呼吸をするかどうかとなった。
改善の可能性は低いと説明されたが、子供は少しでも長く生きてと思い人工呼吸を選択した。
人工呼吸で命は助かったが、離脱できるほどには改善しなかった。
痰の吸引や遠方への転院等で本人もつらそうな表情になっている。
本人の気持ちに反したことになり、つらい状況になってしまった事例です。
子供とも話し合っていれば寿命は短かったかもしれませんが、つらい時間も短かったかもしれません。
考えてほしいこと(具体例)
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どのように生きていきたいか、抽象的なことでもいいです
「1分でも長く」「意識がないなら治療しない」「食べられないなら長生きしたくない」「趣味の●●をしたい」「家で過ごしたい」「家族と過ごしたい」「孫の結婚式までは生きたい。その後は苦しくない範囲で」 -
病気のことについてどこまで知りたいか
「病名だけ」「今後予想される症状について」「残された余命」「すべて知りたくない」 -
自分の病気について誰に知ってほしいか
「自分だけ」「●●さんと一緒に説明を聞きたい」「自分は知りたくないので、●●さんだけに話をしてほしい」 - 意識不明になってしまったとしたら、誰に自分のことを判断してほしいか
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自立した生活が困難になった時、介護が必要になった時の生活の場
自宅なのか、施設なのか、病院なのか
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最期の時を迎える場所
自宅なのか、施設なのか、病院なのか -
元通りの生活が期待できない病状の時にやってほしくない医療、やってほしい医療
心臓マッサージ。気管挿管、人工呼吸。昇圧薬。透析※いわゆる延命治療を希望しないと言われても、その他の症状の緩和につながる治療などはその都度行っていきます。
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口から食べられなくなったときの栄養方法
腕からの点滴。中心静脈栄養。経鼻経管栄養。胃瘻 -
目標となるイベントがあるのか
孫の結婚式に出たい
70歳の誕生日を迎えたい
庭になっているキュウリを食べたい など
パンフレットやエンディングノートなどを参考に考えるのもよいと思います。
輸血を拒否する方への対応について
伊東市民病院では、救急救命治療の最優先を目的に「相対的無輸血」の立場をとっておりすべての患者の治療において輸血を回避する努力を行います。宗教上の理由などにより輸血を拒否される患者に対しては、以下の方針にしたがって対応いたします。
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01
患者さんの宗教的信念を尊重します。
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02
輸血の意味や意義について十分説明します。
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03
当病院は「相対的無輸血」の立場をとっています。
患者さんの輸血拒否の意思を尊重しますが生命維持の為に輸血が必要である場合には輸血を行います。 -
04
3について患者さんに十分説明し、治療法や医療機関について自己決定していただきます。観血的処置や検査・手術等の実施前に輸血の同意が得られない場合には、患者さんに転院を促すことがあります。
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05
緊急症例で転院先が見つからない場合や、ただちに輸血する以外に救命の手段がない場合は、手術同意書・輸血同意書が得られなくても、救命のための手術、輸血療法を実施いたします。
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06
免責証明書など「絶対的無輸血治療」への同意文書には署名いたしません。