外科
Surgery
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診療科のご案内
当科では低侵襲な治療法を積極的に取り入れております。術後の痛みや体力低下の軽減・入院期間の短縮を目的に、腹部手術に対し原則として腹腔鏡手術の方針としています。今後も腹腔鏡手術のメリットを最大限生かすべく手技の向上に努めてまいりたいと思います。なお患者さんの全身状態や病状・持病によっては腹腔鏡手術よりも開腹や直接切開法が適している場合もあります。
また、癌治療は国内外のガイドラインやエビデンスに基づいた標準治療を基本としています。いっぽう患者さんやご家族との対話も重視し、年齢や生活環境等、個別に配慮した最適の診療を心がけております。また、退院後の生活を見越したがんリハビリテーションや栄養指導、服薬指導、抗癌剤の副作用対策、緩和医療等、様々な専門職によるチーム医療を実践しております。
対象疾患・治療
一般外科
- 鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア・腹膜瘢痕ヘルニアなどの各種ヘルニア
- 乳癌・乳腺炎・乳腺症などの乳腺疾患
- 下肢静脈瘤・下肢静脈炎などの下肢静脈疾患
- 熱傷、外傷、感染症など
- 乳がん検診(一次、二次)
消化器外科
- 胃がん・結腸がん・直腸がん・肝臓がん・胆道がん・膵がんなどの各種消化器がん
- 胆石症・総胆管結石症など胆道良性疾患
- 痔核・痔瘻などの肛門疾患
- 急性虫垂炎・大腸憩室症・腸閉塞症・汎発性腹膜炎などの救急疾患
- ストーマ外来
甲状腺外科
- 甲状腺癌・甲状腺腫などの腫瘍
- 甲状腺機能亢進症や低下症に対する薬物治療
手術について
現在当科では腹部手術に対し、原則として腹腔鏡手術の方針としています。今回導入したシステムは従来以上に視野の展開や血流評価など手術の質を向上する機能を備えていますので、今後も腹腔鏡手術のメリットを最大限生かすべく手技の向上に努めてまいりたいと思います。なお患者様の全身状態や病状・持病によっては腹腔鏡手術よりも開腹や直接切開法が適している場合もあります。手術の際には術式の選択理由等もご説明しておりますが、不明な点がありましたら医師だけではなく対応した看護スタッフ等にも遠慮なくお尋ねください。
※手術実績
手術診断名 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
乳癌 | 16 | 17 | 18 |
乳腺良性疾患 | 0 | 0 | 2 |
急性虫垂炎(開腹) | 5 | 2 | 7 |
急性虫垂炎(腹腔鏡) | 15 | 19 | 17 |
慢性虫垂炎(待機的手術*1、腹腔鏡) | 2 | 3 | 5 |
胃癌(開腹) | 12 | 6 | 9 |
胃癌(腹腔鏡) | 1 | 4 | 6 |
結腸癌/直腸癌/結腸ポリープ(腹腔鏡) | 27 | 44 | 25 |
結腸癌/直腸癌/結腸ポリープ(開腹) | 12 | 11 | 18 |
消化管その他 (大腸切除(良性)、人工肛門閉鎖など) |
13 | 13 | 27 |
肛門疾患(痔核、痔瘻、肛囲膿瘍、直腸脱) | 11 | 18 | 19 |
胆石症・胆嚢炎・胆嚢ポリープ(腹腔鏡) | 47 | 34 | 40 |
胆石症・胆嚢炎(開腹) | 4 | 0 | 2 |
総胆管結石症(開腹) | 2 | 0 | 0 |
総胆管結石症(腹腔鏡) | 0 | 2 | 0 |
肝切除術 | 2 | 1 | 2 |
胆道癌 | 2 | 0 | 2 |
膵癌/膵腫瘍(腹腔鏡) | 0 | 0 | 1 |
腸閉塞 | 12 | 14 | 20 |
穿孔性腹膜炎 | 16 | 15 | 13 |
成人鼡径ヘルニア(前方アプローチ) | 21 | 25 | 21 |
成人鼡径ヘルニア(腹腔鏡) | 38 | 45 | 72 |
小児鼡径ヘルニア | 4 | 2 | 3 |
その他ヘルニア (閉鎖孔、大腿、腹壁瘢痕、臍) |
4 | 5 | 6 |
その他ヘルニア(腹腔鏡) (閉鎖孔、大腿、腹壁瘢痕、臍) |
4 | 6 | 3 |
その他(体表、頭頸部、四肢) | 2 | 1 | 0 |
その他(腹部) | 0 | 0 | 0 |
CVポート植込み術 | 10 | 11 | 27 |
合計 | 281 | 298 | 365 |
*1)急性期に抗菌薬治療をおこない、炎症をおさめたのち(1〜3ヶ月以降)に虫垂を切除する方法です。
3D腹腔鏡システムのおはなし
2023年1月に導入した腹腔鏡システム(VISERA ELITEⅢ)のご紹介です。当病院の内視鏡手術システムは4台目となります。外科だけでなく産婦人科、泌尿器科、耳鼻いんこう科でも手術に使用します。
本システムの特徴
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3D内視鏡
術者が3Dシールド(TDRやUSJのアトラクションでかける、あのメガネです)を装着することで、3D画面を見ながら手術を行います。腹腔内の立体構造や操作を理解しやすくなり、より安全性と正確性に配慮した手術を行うことができます。 -
4K内視鏡、ビデオシステム
4Kカメラヘッドの内視鏡も装備します。細かい脈管や神経などを正確に認識できることができます。 -
IR機能
インドシアニングリーン (ICG) という蛍光剤を投与して、近赤外光 (Infra-Red:700-780nmの波長の光)を当てることにより発生する蛍光を観察できる機能です。胃や腸を吻合(縫い合わせてつなぐ)する際に血流が保たれているかの判断に利用します。 -
高輝度32インチ4K対応ディスプレイ
上記の機能を、従来よりも輝度・サイズが進化したディスプレイ2面で利用します。手術の質向上や時間短縮だけでなく医療者の負担軽減にもつながります。
システム全体
3D対応内視鏡(従来の2D画面での手術も可能です)
3D手術時に装着する3Dシールド
IR機能の実際(術中写真)
痛みを抑えた痔の治療
いぼ痔の治療としては手術が一般的です。しかし手術となると「陰部を見せるのが恥ずかしい」「手術の後が痛いという人が多い」などで尻込みし、その結果病状を悪化させてどうにもならなくなって初めて病院を訪れる方が多いです。
我が国でも2005年からいぼ痔に対する画期的な治療が保険で出来るようになりました。もともと中国で痔の治療に用いられていた『消痔霊(しょうじれい)』の主成分が明らかとなり、『ジオン注』として販売されました。このお薬は、肛門からいぼ痔の中に注射で投与するだけで、字の通り『痔が消える』ように治っていくと言われるものです。手術では痔の部分を切除するため痛みがしばらく続きますが、適切な方法で治療を行えばほとんど痛みはありません。方法は、1つのいぼ痔に対して4つの段階で薬液を注射する、というものです。治療時間は概ね30分以内です。これだけで、いわゆる『脱肛』は注射した翌日から無くなったり、『肛門出血』は速やかに出血が止まったりして、その結果排便がスムーズになります。
ただし、すべての痔核に有効というわけではありませんので、痔でお悩みの方はご相談ください。
本治療法は、一般には『ALTA(アルタ)療法』として知られていますので、気になる方はインターネットなどで検索していただければその内容が分かると思います。当病院では月曜外来担当の天池医師が行っております。
ジオン注投与イメージ(4段階注射法)
(岩垂純一先生著 『ジオン注による治療を受けられる患者さんへ』より引用)
腹部ヘルニアの手術ってどんなものがあるの?
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鼠径ヘルニア
足の付け根の部分に鼠径管というお腹と陰嚢をつなぐ通り道があります。男性では胎生期(生まれてくる前)に精巣がお腹の中から陰嚢に鼠径管を通って移動し、その後鼠径管は閉じます。女性では子宮を支える靭帯が鼠径管を通って皮膚の下まで通じています。
鼠径管が閉じずに腸管が脱出すると、幼少期から足の付け根のふくらみがみられます。小児鼠径ヘルニアがそれに該当します。
成人では閉じた鼠径管にお腹の圧がかかることで、開いてしまい腸管が脱出して、生じます。腹圧がかかる習慣(重い物をもつことが多い、便秘がちで、よくいきむ…など)があると生じやすいです。
治療法は、あいた穴を閉鎖する手術です。手術方法はいくつかあります。
<小児鼠径ヘルニア>
鼠径管を通って、腹膜が袋のように伸びて脱出しています。足の付け根を2~3㎝ほど切開して、その袋をしばって閉鎖します(Potts法)。当院では日帰り手術、1泊2日入院で対応しています。
<成人鼠径ヘルニア>
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前方切開法
従来からある手術です。足の付け根を5~6cmほど切開して、腸管が脱出している穴(ヘルニア門)にメッシュ(人工の補強材)をあてて、穴を閉鎖する手術です。脊椎麻酔(下半身麻酔)で行います。不安な方は鎮静薬を使って、手術中はうとうと眠りながら行うこともできます。当院では基本3泊4日入院で対応しています。
近年は腹腔鏡手術を選択することが多いです。過去に手術歴があって腹腔内の癒着がありそう、前立腺の手術後は腹腔鏡でメッシュを挿入する部分がかたく剥がしにくいなど、腹腔鏡で行うのが困難な場合は前方切開法が選択されます。 -
腹腔鏡下ヘルニア修復術
前方切開法に比べて、傷が小さく負担が少ないというメリットがあります。お腹に小さな穴を3か所あけて、お腹の中を腹腔鏡というカメラで見ながら行います。お腹の中から腸管が脱出している穴(ヘルニア門)を確認し、その周りを剥がしてメッシュをあてて穴を閉鎖します。腹腔内から行うTAPP(transabdominal preperitoneal repair)法と腹膜外から行うTEP(totally extra peritoneal repair)法があります。(違いは図参照)
TAPP法ではお腹の中を観察した時に、ヘルニア門がすぐに同定できます。腹膜を切って、メッシュをあてて、腹膜を縫い閉じます。TEP法では腹腔内での操作がないため、臓器損傷などの危険性が低く、術後の癒着が起きることもありません。ヘルニア門が大きい場合には手術の難易度が高くなるのであまり選択しません。
<その他>
ヘルニア門の場所によって、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアという種類もあります。やせた高齢の女性に多く、ヘルニア門が小さいことから腸管が脱出したまま戻らない嵌頓という状態が起きやすいです。嵌頓が起きると腸閉塞となり、腹痛・嘔吐といった症状がでます。長時間、嵌頓が続くと腸管が壊死することもあります。その場合は腸の切除が必要になります。当院では嵌頓したヘルニアに対する緊急手術も対応しています。前方切開法か腹腔鏡下で行うかはその状況に応じて選択しています。
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腹壁瘢痕ヘルニア
以前手術したお腹の傷跡の部分が弱くなって、腸管が脱出する状態です。治療方法は鼠径ヘルニアと同様、ヘルニア門をメッシュで閉鎖する手術です。ヘルニア門が大きい場合には単純閉鎖といって、筋肉や筋膜同士を縫い閉じて閉鎖する方法もあります。
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単純閉鎖
穴が小さい場合は、筋膜を縫い閉じて閉鎖します。穴が大きい場合には、再発率が高くなるため、メッシュを用いた補強が推奨されています。 -
IPOM(intraperitoneal onlay mesh)法
腹腔内にヘルニア門を覆うように、メッシュをあてます。 -
IPOM plus
ヘルニア門を閉じた上で、メッシュを腹腔内からあてます。 -
Rives stoppa法
メッシュを筋肉と筋膜の間に留置します。腹腔内にメッシュを入れた場合、メッシュに腸管が癒着して腸閉塞が起こるといった合併症がありますが、それを回避することができます。
①は前方切開で、②~④は前方切開もしくは腹腔鏡で行います。ヘルニア門の大きさなどでどの方法にするか決めます。
当病院の乳腺診療について
当科では随時、乳腺疾患に対する診断と治療を受け付けております。
乳癌については、現在ガイドラインに記載されているほとんどの検査/治療が可能です(下記をご参照ください)ので、初診から手術、薬物療法(抗がん剤)、緩和ケアまでどの段階であっても対応いたします。
また当病院で乳癌と診断した場合には当病院での治療以外に静岡県立静岡がんセンターや順天堂大学医学部附属静岡病院との連携パス(下記)、もしくはその他の施設のご紹介も承っておりますので御希望をお伝えください。セカンドオピニオンも随時お受けしております。
- 当病院で実施できること
- 当病院で実施できないこと
- BRCA遺伝子検査
- 静岡県東部地域連携パス【乳がん】
ブレスト・アウェアネス「乳房を意識する生活習慣」って?
乳癌検診を受けた際に「自己検診」を勧められたことはありませんか?鏡の前で手を上げて、とか触り方とか、よく分からないし覚えるのもむずかしく、パンフレットの通りにできなかった方も多いと思います。
一方、日本人の乳癌罹患率は年々上昇しているため、厚労省や乳癌学会では自己検診に代わって2021年からブレスト・アウェアネス「乳房を意識する生活習慣」を推奨しています。
決まった方法で自己触診や視診を行うのではなく、
「自分のいつもの乳房を意識し、変化を感じる生活習慣をつける」ことで乳癌を早期に発見し、乳癌による死亡を減らすという方法です。曜日や時間など決めずに、着替えやシャワー、入浴の時に『いつもと同じかな?』と意識して触ってみましょう。しこりを感じる場合はもちろんですが『なんかいつもと違う』程度の違和感でも結構です。気になることがあればかかりつけの先生に相談するか、外科を受診してください。
また症状がなくとも、2年に一度の検診マンモグラフィを受診しましょう。伊東市でも40歳以上の女性の方へご案内しています。
外部リンク
- 乳がん検診 - 伊東市 https://www.city.ito.shizuoka.jp/gyosei/soshikikarasagasu/kenkosuishinka/kenko_fukushi/1/2/gan/8915.html
- 日本乳癌学会(市民のみなさまに知ってほしい情報) https://www.jbcs.gr.jp/modules/citizens/
- 「ブレスト・アウェアネス」のパンフレット https://www.jbcs.gr.jp/uploads/files/citizens/breastawareness_pamph.pdf
特定ケア看護師
勤務医の負担軽減策のもと、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」の一部が改正され、(平成27年)厚生労働省令で定める21区分38の特定行為が研修により可能になりました。当院には3名の特定ケア看護師が所属しており、所定の研修期間を終え内科・外科を中心に活動しています。特定ケア看護師は、医師の指示のもと、人工呼吸器の管理や輸液管理、血糖コントロールなど多岐にわたり医師業務の代行が可能であり、当病院のような慢性的な医師不足に悩む地域病院の診療体制には欠かせない存在となっています。
特定ケア看護師につきましては看護部のページでもご紹介しています。
ストーマ外来について(第1、第3木曜日午後)
外科外来にて、ストーマ外来を毎月第1、第3木曜日の午後、皮膚・排泄ケア認定看護師とともにおこなっております。
腸管または尿路ストーマの管理や創傷管理、褥瘡のケアについてご相談を受け付けております。別の病院で手術を受けた方でも受診できますが、予約制となりますので受診を御希望の際はお問い合わせください。
チーム医療の推進と入退院支援
院内では他職種によるチーム医療を推進しています。入院時から退院まで下記に挙げた様々なチームが介入し、円滑に診療を進めてまいります。入院治療中だけではなく退院後の生活における患者さんやご家族の不安を軽減するため、院外の事業所や行政とも連携して計画を立て、実行してまいります。特に前述の特定ケア看護師が在籍している場合は、他職種・主治医・患者家族の間で緊密な意志疎通を進めてもらえるため、スタッフや家族の負担が大きく軽減しています。
現在外科診療に関わるチーム体制
(院内)
主治医を中心とした外科チーム
退院支援看護師
NST(栄養サポートチーム)
緩和ケアチーム
がん化学療法認定看護師
ICT(感染制御チーム)
リハビリテーション室(がんリハビリテーション、術前術後の運動リハ、乳がん術後のマンマリハビリ(上肢浮腫の予防・治療))
MSW(メディカルソーシャルワーカー)
(院外)
訪問看護ステーションや訪問診療クリニック、介護施設などの事業所
伊東市、伊東地域包括支援センター
ケアマネージャー
周術期歯科連携
2012年4月診療報酬改定で、がん患者の口腔を守るための連携が、「周術期口腔機能管理」という保険診療上の項目で評価されるようになりました。周術期の感染症予防や、化学療法施行中の口腔内トラブル、治療の維持を目指しています。当院も伊東市歯科医師会と連携し周術期連携をしています。がんの手術や化学療法を受ける患者さんには、歯科受診を(かかりつけがあればかかりつけに)お勧めし、治療に伴う合併症の減少を図っています。
R4年度の業績
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2022年9月17日 静岡県外科医会第246回集談会
腹腔鏡下超低位前方切除術後の吻合部狭窄に対し、経肛門的低侵襲手術(TAMIS)を施行した1例
村松 寛惟、天池 寿、小倉 礼那、城野 晃一、神谷 紀之
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2022年11月18日 第83回日本臨床外科学会総会一般演題
当院における大腸癌ステント挿入例と非挿入例の比較検討
小倉 礼那、神谷 紀之、天池 寿、城野 晃一、辛島 史憲
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2022年11月18日 第83回日本臨床外科学会総会一般演題
十二指腸球部後壁潰瘍膵穿通により大量出血を生じた一例
加納 健史、辛島 史憲、小倉 礼那、城野 晃一、天池 寿、神谷 紀之
担当医
- 消化器外科 副病院長兼診療部長兼外科部長 神谷 紀之(カミヤ ノリユキ)
- 消化器外科(胆・肝・膵外科)内視鏡外科(胃・大腸・胆肝膵) 副病院長 天池 寿(アマイケ ヒサシ)
- 消化器・乳腺疾患 小倉 礼那(オグラ レナ)
- 外科・甲状腺疾患 非常勤 北村 裕(キタムラ ユタカ)