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伊東ベテランズ

火曜朝の抄読会 2023-Case25

2023.7.11

CLINICAL PROBLEM-SOLVING

A Bumpy Road to Diagnosis 11.07.2023

 32歳の女性がこの半年のうちに悪化する腹痛を主訴に救急外来を受診されました。診察検査しますと彼女には全身リンパ節腫脹が見られます。腹腔内リンパ節腫脹が腹痛の原因のようです。9kgの体重減少がありました。ROSとしては悪寒、夜間の発汗、痰を伴わない咳嗽、時にある呼吸苦、吸入薬の効かない喘鳴が陽性症状としてあります。発熱、頭痛、視野異常、胸痛、吐気、嘔吐、便秘・下痢、排尿障害などは認めませんでした。更に聴取すると両手の関節痛があります、6か月前から最近彫ったtattoo部分に皮膚の”でこぼこ(bumps)”が出現しました。眼、口腔の乾燥、口腔アフタ、胸膜痛、光線過敏、脱毛はありません。既往歴にはGERDと便秘以外に特記事項ありません。内服は腹痛に対してacetaminophenを日2回使用します(たいして効きません)。黒色人種でBoston在住、渡航歴なく、介護職です。sexually activeでpartnerは一人、condomを常用しています。日半パック、13年の喫煙歴、週8杯程度の飲酒歴があります。家族歴に癌はありません、叔母がsarcoidosisです。診察すると両側の頚部、鎖骨上、腋下、鼠径部に連なるリンパ節腫大を認めますが無痛です。心窩部に軽度の圧痛を認めるのみです。Tattoo部に”bumps”があり、軽度発赤、丘疹が四肢にありました。検査所見では末梢血白血球数5240 , eosinophils14.5%(0-5)、血沈は時間50mm(0-20)、CRP値は正常でした。angiotensin-converting enzyme(ACE)値は146U/L(16-85)、IgG2240mg/dl(700-1600)。結核に対するinterferonγ assayは陰性、抗核抗体、ANCA類も陰性です。胸腹部の造影CT所見では両肺に顆粒状影と右下葉には”galaxy sign(i.e., coalescent pulmonary   granulomas that create mass-like appearance )”といわれる浸潤影、肺門部、縦郭、腹腔・後腹膜にリンパ節腫大を認めます。右鼠経リンパ節の生検がされて、病理組織所見では本来のリンパ節構造は消失して非壊死性肉下種の集簇より成る結節を形成しており、悪性所見はなく、結核菌染色は陰性でした。sarcoidosisと確定診断されて、40mg/dayのprednisone投与が開始されました。腹痛と全身症状は直ちに消失しました。一年後にprednisoneを中止する頃に再燃、治療を再開して現在はglucocorticoid-sparing immunosuppressantとしてmethotrexateを内服しています。

 COMMENTARY 本例に見られた全身リンパ節腫脹の鑑別診断は広範で、結局切除可能な部位でリンパ節生検がされて悪性腫瘍、感染症が否定され、sarcoidosisの診断となりました。系統的な鑑別診断、慎重な除外診断が重要でした。sarcoidosisは集計例でみると、肺病変が90%、皮膚病変24%、リンパ節15%、眼12%、肝臓12%の順で障害されますがあらゆる臓器が罹患病変となります。心病変は稀とされますが剖検例でみると1/4の症例に心病変を合併すると報告されています。発生頻度はアメリカでは10万人当たり8人とされ、性、年齢は様々ですが女性、45歳以上、黒色人種に比較的多いとされています。多くは本例のごとく潜在性に進行して、無症状例も少なくありません。Lofgren’s syndrome(acute fever, erythema nodosum, bilateral hilar lymphadenopathy, and periarthritis)、Heerfordt’s syndrome(uveoparotid fever and another form)と呼ばれる特徴的な病像もあります。微粒子や微生物に反応する肉芽腫もありますし、悪性腫瘍関連反応・”sarcoid-like reaction”がリンパ節に見られることがあり(特に肺癌、乳癌、悪性リンパ腫等)、診断に注意が必要です。本例に見られたようにtattoo部分に見られる皮膚病変は色素に対する反応とされて、やはり瘢痕部に見られる病変”scar-sarcoidosis”と共に有名です。肺病変の一つとして本例にもみられた小顆粒が集簇するような浸潤影”galaxy sign”が見られます。心病変と不整脈は死因として重要で確認されねばなりません。眼病変も無症状に進行します。Ca代謝のチェックも必要です。無症状に骨・筋病変も合併することが知られています。治療は有症状であったり臓器障害が明らかな場合にはfirst-line therapyとしてステロイドが使用されます(prednisoneとして日20mg-40mg)。本例は全身リンパ節腫脹の鑑別診断について生検組織所見でsarcoidosisの確定診断を得るまでに”Bumpy Road to Diagnosis”となりましたとういうオチです。

 本例は全身リンパ節腫脹の鑑別診断について、生検組織所見でsarcoidosisの確定診断を得るまでに”Bumpy Road to Diagnosis”となりました、というオチです(皮膚病変としてtattoo部分他に”bumps”を認めていました)。伊東ベテランズの一人、小池先生がいみじくも仰いました。「へき地診療所(例えば離島の診療所)で本例のような患者さんに遭遇したら、胸部単純写真で両側肺門リンパ節腫大を確認して、sarcoidosisの暫定診断でステロイド使用して寛解、めでたしめでたしとなる可能性あるよね」。確かにその通り、そう考えると医療って本当にアートです!って感心すると皆さんに叱られるでしょうか?

      <伊東ベテランズ 川合からの報告です>