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伊東ベテランズ

火曜朝の抄読会 2025

2025.9.17

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITALに学ぶ会

Case 25-2025: A 93-Year-Old Woman with Dyspnea anf Fatigue 09.16.2025

 93歳の女性が1か月前から呼吸困難が出現していると来院されました。貧血(末梢血Hb7.7g/dl)を伴った中等から重度の大動脈弁狭窄症と診断されました。貧血の原因はHeyde’s syndrome(当院でも経験例あり、詳細は各自で勉強してください)によるとされて輸血がされ、貧血、呼吸苦は一過性に改善しました。本例は7年前に心雑音の精査で軽度の大動脈弁狭窄症が発見されています。経過中に心房細動も合併しています。無症状のなか、9か月後の心エコー検査では進行した重度の大動脈弁狭窄症と診断されました。担当医は心臓専門医を紹介してTrans-catheter Aortic Valve Replacement (Implantation)/ TAVR(TAVI)が提案されました。本例の予想される生命予後は2年以内、病状の進行は不可避で、症状の再発が予想されることが説明されました。

 皆さんご承知のようにTAVRはアメリカで2011年に認可されて以来、安全性を中心に急速に発展して、現在では高齢者・大動脈狭窄症の治療手段として圧倒的に受け入れられている治療手技です。顕著な生命予後/QOLの改善が証明されており、アメリカでは現在術後の平均在院日数はわずか一日です。対象の多くが高齢者であり、それなりにriskはあり、術前の詳細な検査、評価は当然必要となります。

本例においても、それら現状と他の治療選択枝、①症状出現、或いは悪化した時点で再考する、②投薬のみで加療を継続し、TAVRは受けない、③何もせず有症状時には緩和療法を受ける、の詳細が慎重に提示されました。勿論、治療法の決定には患者さんの意思が尊重されることが説明されました。担当医は本例がTAVRを選択するだろうと予想していました。ところが彼女は何もせず、症状出現時には保存的療法と緩和ケアを望む(ホスピスも考慮)と結論されたのでした。患者さん自らの意見も論文中にPATIENT PERSPECTIVEとして記載されています。自分は充分に生きたこと、自身の人生(関係してきた人達)に感謝していることが述べられています。

N ENGL J MEDは世界で最も受け入れられている医学・学術誌です。この学術誌を通して、我々はM.G.H.を中心として実践されている世界標準としての臨床的な態度、考え方を、世界の片隅、日本のへき地においてさえ共有できることができます。N ENGL J MED / CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITALに感謝です。

< 伊東ベテランズ 川合からの報告です >